見えない首輪

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「ま、いいや」 黙っている私をどう解釈したのか、彼方はさして気にした様子も見せずに読みかけの本を読み始めた。 私への関心なんてその程度。 他の女の人と会ってることも否定しない。 私はきっと、何をしても怒らない、なんでも言うことを聞く、自分の好き勝手にできる相手。 こんな関係、よくないのは分かってる。 やめないといけない。 頭では分かっているのに心がついていかない。 だって…ずっとずっと好きで忘れられなかった人が、こんなに触れ合える距離にいるのに、ひと時でも、私を見てくれるのに。 自分から離れるなんて無理だよ。 馬鹿だって分かってる。 それでも。 一瞬でもいいから、愛されてると錯覚したい。
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