底なし沼

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今日は彼方が私の家に来る。 なせだか分からないけど、彼方が来たいと言うから、今日はうちで過ごすことになった。 少し入り組んだところにある私のアパート。 一応位置情報は送ったけど、きっと辿り着けないだろうと思い『近くなったら連絡してね』と伝えている。 だから家で携帯を見つめて待機していたのだけど。 ───ピンポン。 ………ん? 今日は彼以外誰か来る予定はない。 宅急便? 不思議に思いながら覗き穴を覗くと、私が見ているのが分かっているかのように、少し口元に笑みを浮かべている彼方が見えた。 驚いて、慌てて鍵を開けてドアを開く。 「っよ、よく家分かったね」 「まぁね」 「あ、どうぞ…狭いですが…」 「お邪魔します」 丁寧に挨拶をして靴を脱ぐ彼方。育ちの良さを感じる。彼の家は確か大きな会社をやっていて、家族揃ってエリートだと誰かが中学で噂していた。 「はい、これ」 「?なに?」 「食べたいって行ってたカフェのタルト」 「えっ!!」 ぱぁっと顔を輝かせて差し出された紙袋を受け取る。 確かにテレビの特集を見ながら食べたいと言ったことがあった。 「嬉しい?」 「嬉しい…!ありがとう!」 「あとで一緒に食べよう」 「うん!コーヒー入れるね」 「ありがとう。手洗っていい?」 「あ、洗面所そっちです」 「うん」 言う前から洗面所の方に向かおうとしていた彼方。 餌付けも順調だなーとかなんとか聞こえた気がしたけど、たぶん気のせい。
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