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「柊花さん」
愛しい声で呼ばれて、振り返る。
愁を視界で捉えた瞬間、時が止まった。
だって、彼が手に持っているのは、私のドレスと同じ──真っ赤なバラの大きな花束。
目を見開いている私を、彼は真っ直ぐ射抜いて、言葉にする。
「結婚しよう」
人生において、嬉しくて言葉が出ないなんてことがあるとは思わなかった。
呆然としたまま、花束を受け取ると、あまりに綺麗な赤に目を奪われる。
声が出ない。呼吸すらも止まった気がして、反応がない私に、愁の顔が少しだけ不安そうになる。
それを見ると一気に現実味を帯びてきて、ぶわっと涙が溢れ出た。
「一生“幸せ”にする。とは…言えません。でも、一生、死んでも守ります。普通の夫婦生活はできないし、嫌になったって言われても逃がしてあげれないけど……それでも、俺と…」
どこか声が震えているように思えた愁。
たまらなくなって、思い切り彼に抱きついた。
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