幸か不幸か。

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案の定酔っ払ってまともに歩けなくなった私は1人で帰れる状態ではなかった。 だけど死んでも理希に送られたくなくて。 「ほら芽衣。理希くん待ってるよ」 「やだ!ひとりで帰る!!」 「帰れないでしょそれじゃ…」 言われたそばからふらついて、横にいた人にぶつかってしまう。 「っと、大丈夫?芽衣ちゃん」 終盤寝てて酔いが覚めてる翔也くんに受け止められる。 この人は酔うのも早いけど復活するのも早い。 「じゃぁ翔也くんと帰るっ」 「ええ?!」 「後ろ乗せて」 「っちょ、待て待て待て」 翔也くんが跨っている自転車の荷台に勝手に乗ろうとする私を彼が制した。 「乗せてよぉー!」 「だーめ!理希が怒るから」 「私の好きなところとかないらしいし、怒らない!」 「…だからそれは…」 翔也くんが困ったように頭を掻いた。 迷惑かけてるのは分かってる。 でも付き合ったばかりで、本来なら惚気トークの1つくらいあったっていいのに、あんな冷たいこと言われて、飲まないとやってられなかった。 先に好きになってくれたのは理希なのかもしれないけど、その間理希は彼女だっていたし、セフレだっていた。 私のことなんて、大して好きじゃないんじゃないの? こんなにイライラして、もやもやして……悲しくなってる私の方が…私ばっかり好きなんだ。 「……理希は、私のことなんか、大して好きじゃない」 小さくそう溢したつもりだったけど、聞こえていたらしい。 グイッと腕を引っ張られ、無理矢理振り返らされると、怒った顔の理希がそこにいた。 「お前いい加減にしろよ」 「…っ」 ギロッと睨まれて、怒っていたくせに泣きそうになる。 …なによ。なんであんたが怒るの。 怒ってるのは、悲しいのは、こっちだし…! 理希は勝手にしろ、と私を置いていくのかと思いきや、乱暴に引っ張って私を連行した。 腕を掴む力は強くて、すごく怒っているのが伝わってくる。 「っやだ!今日は理希んち行かない…っ帰る!」 「帰すわけねぇだろ」 「なんであんたが怒ってんのよ!」 その質問には答えず、すぐ近くだった自分のアパートの一室に私を引きずり込んだ理希。 後ろで閉まった玄関のドアにドン!と強めに押し付けられ、その衝撃に顔が歪んだ。
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