出会い

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出会い

物心ついた時から、この世に幸せなんてないと思っていた。 両親はいつも私のことを邪魔者として扱っていたし、ご飯も残り物を与えられるだけだった。 お風呂に入ろうとすると水道代の無駄だって怒られた。 みすぼらしい姿の私は小学校でも相手にされず、バイ菌扱いされて友達なんて出来なかった。  学校に行けば分かる。私の家は普通じゃないって。 みんな毎日洗濯してもらってアイロンがかけられたシャツを来て、参観日には親が来てくれて、楽しそうに友達と話をしている。 私は楽しいっていう感情も知らなかったし、笑い方も知らなかった。 だけどマイナスな感情はよく知ってる。 苦しくて、悲しくて、惨めで、いっそ死んだ方が楽になるんじゃないかって、そんなことを考え始めるくらいだった。 そんな時、突然家に車が突っ込んできて、その車が炎上し、大火事になった。  両親は車の下敷きになっていて、ピクリとも動かなかった。 「遊月会(ゆうげつかい)の奴ら無茶苦茶しやがって。一般人巻き込んでんじゃねぇよ!」 スーツの男の人が数人中に入ってきて、倒れている私を見つけたそのうちの1人が駆け寄ってきた。 「おい、大丈夫か?!」 その人は私の体を起こして声をかけてくれる。 煙を吸い込んで意識が朦朧としていた。 「四季(しき)さん!早くここから離れましょう!」  「待て(なぎ)!子供がいる!」 「え?!」 気がつけば抱き抱えられていて、そこまでしか記憶がない。 気がついたら、大きな屋敷の一室で、布団に寝かされていた。 それから少しの間、その屋敷で過ごした。 ここでは3食ご飯を食べさせてもらえるし、お風呂にも毎日入らせてもらえる。 清潔な布団で寝て、朝起きて中庭を散歩したって怒られない。 今までで1番いい生活をさせてもらった。
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