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学校
「ほら、あの子だよ。アクリルスタンドの。」
教室の外から、そんな声が聞こえる。
視線を感じるけれどそっちを向く気はない。
向いたら最後、写真を取られてSNSにあげられる。
昨日もそうだった。
でも、コメントで「この子かわいい」って書いてあったのは嬉しかったな。
「ねぇ、あの絵柄ってさ。―――じゃない?」
教室の外から一番見やすい左側の一番後ろの席であることを悔やむ。
「「「確かにー!」」」
聞こえる声の数から考えると、4人の女子かな。
あの態度から予想すると、今人気で社会現象を起こすほどアニメの主要キャラのフィギュア。
最近はやっているものって、何カ月からしたら流行が別の作品に変わるはず。
だからそれまで耐えるしかない。
昼休みが50分だなんて拷問に等しい。
昼休みの長さを呪っていると、机の中のスマホが震えた。
画面には立方体さんからのメッセージが届いていた。
[昨日のアニメ見た?神回だよね!?]
さっきまで強張っていた心が和らいでいくのを感じた。
[わかる!特に後半の主人公のセリフがよかったよね!]
すぐさま返信すると、既読がついてまたメッセージが送られてきた。
何回かやり取りをすると昼休みは終了5分前になっていた。
[ごめん、あと5分で休み時間終わるから放課後また送るね]
そう返すと[了解!またあとでね]とすぐに届いた。
メッセージを確認すると電源を切って鞄へとしまった。
こんなにも話が合うなんて、きっと同じアクリルスタンドの女の子なんだろうな。
そんな風に考えられていたのは、1週間前まではフィギュアに対して醜い感情しか抱いていなかったからなのだろう。
そして1週間後。
私は立方体さんとリアルで会ったのだ。
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