2人が本棚に入れています
本棚に追加
何で会えないんだろう。
もう一度スマートフォンの画面を見るけれど通知は来ていない。
[明日の午後6時、スマホを持って駅前に集合しよう]
昨日送ったメールの文面を思い出す。
失礼なことは書いていない。
駅前に一人で来ている人は私だけ。
かなり見られている、というか注目されている。
何回もシミュレーションした通りに見られている。
本当は、メッセージを送ろうか迷っていたけれど。
実際に会いたくなって送ったのだ。
約束の時間を20分も遅れて、相手はやって来た。
「すみません、部活が長引いて遅れてしまいました。いろさんですよね?立方体です。」
なんとなく眺めていたスマホの画面から顔をあげると、そこには。
立体的な女の子がいた。
ウソでしょ。
なんでフィギュアが。
「いろさんって、アクリルスタンドなんですね?可愛い!」
目が嘘をついていないことを証明している。
アクリルスタンドである自分と、美少女フィギュアである彼女。
彼女が口を動かすたびに、唇や歯に見とれてしまう。
しかも、スマホが立体的だ。うらやましい。
「あぁ、うん。…ていうか立方体さん、フィギュアだったんだ。塗装きれい…。」
目が合った瞬間から、気になっていたことだ。
「そうですよ。正真正銘の、フィギュアです。」
アクリルスタンドとフィギュアなんて、分かり合えないと思っていた。
今日までは。
アクリルスタンドである私を、駅前にいる人たちみたいに遠慮なく眺めるんじゃなくて憧れている人を見る目で見てくれている。
この子とは仲良くなれそうだな。
そう思いながら、彼女を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!