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天使信仰の町
この町は天使信仰が盛んだ。
その始まりは百年以上前に遡る。
ある日、漁に出た船が突然の嵐に見舞われた。
海は時化、漁師たちは皆助からないかと思われた。
残された家族は絶望し、浜辺で「どうか皆の無事を」と空に願ったのだった。
すると不思議なことに、真っ暗な雲の間から一人の天使様が舞い降りた。
天使様は大きな杖を空に突き上げると、嵐は轟音と共に収まり、穏やかな海が戻った。漁師たちも皆無事、町に帰ることができたという。
「……その時の天使様は燃えるような赤い髪をしておった。
まっすぐの御髪は一本一本が光に反射し、まさに炎のようじゃった。
なんとも神々しいお姿よ。
ああ、わしが生きているうちにもう一度あのようなお姿を拝みたいものじゃ」
「……おばあちゃん、またその話」
私は山のように積み上げられた食器を拭きながら、祖母のいつもの話を聞き流した。
祖母は130歳とは思えないくらいしっかりしている(正確には私の高祖母。ひいひいおばあちゃんだ)。
この町で唯一、昔話をリアルに体験した『生ける化石』と呼ばれている。
ちなみに本人の目の前で言うと「輝く宝石じゃ!」って怒られるから気をつけて。耳も本当によく聞こえるの。
「アンバー、おぬしは天使様の降臨を目にしたわしの玄孫なんじゃ! もっと信仰心を持てぃ!」
「はいはい」
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