天使信仰の町

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 私たちは一番大きな教会の裏口から中に入る。  そこで届け物を渡す相手を見つけた。 「サフ。これ、ウチのお父さんから」 「お~! アンバー、ジェイドばあちゃん、いつもありがとな!」  サフ……サファイアは、私の幼馴染。  教会群をまとめる大司教様の孫の一人で司祭見習いだ。  彼は小さい時から自分がいずれこの町の大司教になるって、勉強も、家業の手伝いも頑張ってる。 「サファイア……襟がくずれちょる。ちゃんとせい」  祖母は慣れた手つきでサファイアの祭服の襟元を直した。  おばあちゃん、目ざとい……いや、目も本当にしっかり見えてるんだよね。 「ばあちゃんは相変わらず細かいな~。でもありがと」  サファイアは祖母にお礼を言って、「そうだ」と、持っていた紙の束から一枚私たちに差し出した。 「これ、来月教会で行われるイベントの案内なんだ。二人もぜひ来てくれよ」 「……歴史展?」 「ああ。サーサカスの天使信仰の始まりや教会の歴史、天使様に由来のある貴重な品の展示とか、映画の上映もされる。  観光客への理解促進や、町の人へもさ、普段と違った教会を楽しんでもらえればいいなーと思って」 「ふーん」  私はチラシを見た。六つの教会それぞれにテーマがあり、展示内容も異なるようだ。  おばあちゃんはこういうの嫌いそうだなーと思ったら、案の定祖母の口からは文句が出た。 「ちゃらちゃらしおって。天使様への冒涜(ぼうとく)じゃろう」
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