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この天使信仰始まりの後日談とも言えるエピソードが、今では一部のオカルトファンを熱狂させているらしい。
だからかなぁ、こう言っちゃなんだけど、海岸目的で来る観光客ってなんだか……陰気な感じ、なんだよねぇ。
「でもおばあちゃん、実際にあの浜辺で力を吸い取られたなんて話、聞いたことないんだけど」
「ばかもん!」
「いたっ!」
祖母は私の頭を、丸めたチラシで叩いた。
ただの紙のはずなのに妙に痛い。
というかサファイアからもらったチラシを早速こんな風に筒状にしちゃってさ、本当におばあちゃん、行く気あるのかな。
「所詮わしら人間にとっちゃあただの砂浜よ。
しかし……現にあの場所へ足を踏み入れ、気が狂って帰った者もおるんじゃ。公になってないだけでな。
それに……わしには分かる。あそこは力を欲しちょる。人間の力でもな。
だからアンバー、決して浜辺には近づくんじゃないぞ」
祖母の気迫に思わず背筋がぞっとした。
ちらりと、振り返って海岸へと続く道を見る。さっきの集団の姿は見えない。
あの人たちも無事、帰れるといいんだけど……
***
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