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久しぶりに正面から入った大教会の中を見渡して、私は思ったことを口にした。
「ところで、天使様の像ってあんなのだったっけ?」
教会の奥にそびえる天使像は大理石で作られた大きな像だ。
まっすぐの長い髪に、ローブをまとっている。
右手で杖を持ち、差し出した左手には鳳凰に似た鳥がいる。
改めて見ると、その姿は私たち人間と変わらない。
特にそう思ったのは、この天使像にはいわゆる『天使の翼』がないからだ。
町のパンフレットや本には翼のある天使様の絵も描かれているのに。
「天使様って羽があるんじゃなかった?」
私の発言に怒鳴り声をあげたのは祖母だった。
「ばかもん! アンバーは今までわしから何を学んだんじゃ!?」
サファイアも呆れたため息をついた。
「はー……お前も生ける化せ……輝く宝石ジェイドばーちゃんの孫なんだから、その質問はさすがに今更すぎだろ……」
「えっ、え? え??」
「この町の天使様は翼がないんだよ。パンフレットとかにはちょっと分かりやすく、翼を描いているものもあるけどさ」
「さよう。わしはいけ好かんがな。
……わしらの天使様は赤い髪に黄金の瞳。よくあるちゃちい翼なんぞお持ちじゃない」
「各国、色々な天使像があるみたいだけどな。
それこそ白い翼を持つ天使様もいれば、金髪に褐色の肌、輝く虹色の翼の天使様もいる。真っ白な天使様、もっと変わった外見の天使様もいるらしい」
「へ、へぇ……天使様の世界もいろいろあるんだねぇ……」
「アンバーももっと、教会に通って勉強しろよ?」
「う…………考えてみる」
じろっと祖母に睨まれて、私はそう答えるのが精一杯だった。
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