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 4限目の授業が終わって、5限の授業がある友人たちに手を振った後、1人で家に向かって歩く。  誰もいない部屋に帰ることを考えると、気持ちが沈んだ。  一人暮らしを始めて、気づいたこと。 ーー毎日、温かいご飯をつくって迎えてくれていた母は、偉大だったということ。 ーー人の気配のない部屋は、寒い時期でもないのに冷たく感じられること。 ーー「ただいま」と言っても、「おかえり」と返ってこないこと。  実家にいた頃は、家に帰ればいつも、お母さんが「おかえり」とドアを開けて迎えてくれた。  温かいご飯が用意されていて、食卓から話し声が途絶えたことはなかった。  こちらで暮らし始めてからは、温かくて手の込んだ料理なんて食べていない。  料理に不慣れな私には、インスタントなどの簡単なものしか作れないし、スーパーやコンビニで買ってきて食べることも多い。  実家の温かい空気が懐かしくなって、涙がこぼれそうになった。
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