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 8月。夏休みに入った。  ーーピンポーン。  家のインターホンを鳴らす。  ーーガチャ。  玄関の鍵が開いた。  私はドアノブに手を掛け、自分の方に引いた。「ただいま〜」と笑顔で言いながら。  お母さんから「おかえり」の声が返ってくる。  久しぶりの実家で料理をしてみせる私を見て、「こんなに上達するものなのね」とお母さんがお父さんに向かって言っているのが聞こえた。  料理の腕がここまで上達したのは、あの不思議な現象のおかげだろう。  私だけでは、料理をするようになっていたかどうかさえあやしい。    だが、私はそれを家族には言わなかった。  2ヶ月間の不思議な出来事は、私だけの秘密である。
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