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Episode1
まだ大学卒業してすぐ新卒で入りたての頃、黒瀬先輩は私の教育係だった。
誰からも頼りにされていて、ノリがよく好かれていて。
誰に対しても平等で分け隔てなく接する。
最初は苦手だった。
そういうタイプを学生時代好きになって、裏では…なんてありがちな展開を見て、苦手になった。
もちろん黒瀬先輩がそういう人とか言うつもりはない。
だけど、裏表がありそうな人はもうこりごり。
「よろしくお願いします、黒瀬先輩」
「ん、よろしく。えっと、朝比奈さん。だよね?」
カジュアルスーツを着こなした隣の席に座る、黒髪と黒い目が印象的な先輩は、私の首元にぶら下がる名札を見ながら名前を呼ぶ。
「はい」
「下の名前は?」
「花梨です」
「花梨ちゃんか、いい名前」
なんて言いながら、私のデスクに資料を置いた。
早速仕事振り?
「俺なりにやる事のマニュアル作ってみたんだ。一通り今日やれる所まででいいから、マニュアル見ながらやってみて。分からないことは聞いて」
と準備をしてくれていたのか、指導はマニュアル見て実践というものだった。
人の話を聞いても1回で覚えきれない私にはマニュアルで残してくれるのは凄くありがたい。危機漏れもしないし、慌ててメモを取る必要がないから。
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