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「助かります」と書類を受け取り、早速パソコンに向き合う。
そこから何かを話す。でもなく、ひたすら無言で作業に取り掛かった。
黒瀬先輩も何かを言うのではなく、見守るスタンスなのか、進捗報告を何度か促されるものの、指導という形はほとんどない。
「それにしても、これはわざわざ作っていただいたのですか?」
「うん、俺長ったらしい説明好きじゃないんだよね。マニュアルがあればできる限りその通り動くのになって思うタイプ」
「なるほど、同意見です」
「そう?息合いそうだね」
軽く話はするものの、黙々と作業をするのが好きな私からしたら黒瀬先輩との仕事はかなりやりやすかった。
「黒瀬先輩、ここの数字なのですが」
「蓮でいいよ、長くない?」
「いえ、そういうわけには」
「硬いなあ」
いつも笑われていた気がする。
職場で馴れ合いはいらない。
本気でそう思っていたし、黒瀬先輩の軽さが嫌だった。
教育係で無ければ関わりたくない人。
人間性としては分からないけど、仕事面では尊敬していたし、関わりたくない人だとは思っても、指導係としてはこの人でよかったと思う。
変な矛盾を抱えて、この人の下に付いて1ヶ月だった。
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