繋ぎ眼から

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 見られてしまった……何もかも。ずっと二人だけの秘密だったのに。たった数日間の出来事だったのかもしれない、でもその先のことすらも描いた運命の一冊。 「どんなことをしても自分のものにしたいって……。先生……先生に言わないと……痛っ!!」  今にでも行こうとする彼女の細い足首にペンを突き刺す。そのまま奥まで押し込んでいくと血液が濁流のように抵抗するも、肉を抉る感触を指先で味わいながら止めることをしない。突然の出来事に身動きが取れない彼女はついに態勢を崩してその場に尻をつく。  ようやく対等に目線を合わせると、彼女は震え出して化け物でも見るかのように私を拒否する。思わず鼻で笑ってしまう。いつもはリーダーのように振る舞っているくせに形勢逆転すると途端に小動物。  そんな彼女に目もくれず手帳を拾い上げると見せつけるようにして抱きしめ、皮膚が擦れ温め合うように絡む。唇を重ねどこまでも脳を刺激する彼との接吻をまさか図書室で行うなんて、どこまでも勉強に染まっていた私からすれば考えられない。  ふと我に返ると、彼女は目の前で行われていることを理解できない、もしくは受け入れられないのか声を発する事もできずに大粒の涙を零しながら首を横に振り続けていた。 「アナタは私達だけの世界を汚した。踏み入れた。見てしまった。彼は私のことが好きで、私も彼のことを愛しています。それなのにアナタは邪魔をして、汚して彼を傷つけた」 「私だって……好きだった……。だから心配してたのに……」 「私のことを見下して、彼に見られたくない姿も晒されて……好きな人の目の前で凌辱された気分です。これで嫌われたら、清潔じゃないって拒絶されたら……もしそうなったらどう生きていけばいいですか? 私よりも生きるのが上手で友達の多いアナタなら分かりますよね? どうぞご教授ください」 「おかしい……人間じゃない……」 「いえ、これが本当の私です」   *  繋ぎ眼から覗く彼の目は優しく私を見守ってくれる。どれだけ落ち込んでも、不安を抱えて眠れないことがあっても私に温もりをくれる。だから決まって彼を抱きしめて目を閉じる、すると頭を撫でてくれているようで心が落ち着く。  今度は疼いてしまうから、性行為をするように手帳に愛を刻み込む。こんな毎日がいつまでも続き、私の世界を永遠に照らしてくれる。  そんな充実した私を彼女が恨めしそう見つめてくるから、その度に心がスカっとして笑顔になる。そんな子には罰を与える必要がある……だから彼女をいくつかの栞として加工して、その中の一枚を手帳に挟んだ。  手も足も出ない無抵抗なままに私と彼の愛に飲み込まれて、無限のように苦しんでほしい。でも、私は優しいから彼の熱を少しでもお裾分けしてあげる。  いつまでも甘くて熱い、爛れるチョコレートのような恋。  私が描いた一冊の手帳。繋ぎ眼から彼が微笑むと、私も同じように笑みを浮かべた。
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