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「さおりちゃん! これ見て!」
六月のある朝。
教室に入ると、真弥ちゃんがノートを持って駆け寄ってきた。
愛波ちゃんがこっちを見ている。
「……ランドセル置いてからでもいい?」
わたしはそう言って、ドキドキしながら自分の席へ向かう。
ランドセルを置くとすぐ、真弥ちゃんは持っていたノートを開いた。
「これ! あたし誰かに熱血変顔ゴリラだと思われてるの!」
そこには、見開きページいっぱいに悪口が書いてある。
チビ、小さい、低い、ミニサイズ……。
「あたしより背が高いことを自慢したい気持ちはよくわかったんだけど……問題はこの三つ!」
真ん中に大きく書かれた三行を、真弥ちゃんが指差す。
『ゴリラみたいな強さ』
『めんどうくさい時変顔』
『熱血のおし売り』
その三つだけ、背が低いという意味じゃない。
「これは調査が必要だよ!」
真弥ちゃんが宣言するみたいに言った。
「犯人をさがすってこと?」
わたしが聞くと、真弥ちゃんはにんまりと笑った。
「あたしは真実と正義を求める探偵だからね! 休み時間に聞き込みをするから、さおりちゃん助手やって!」
「え!」
「じゃあ後でね」
真弥ちゃんは自分の席へと戻って行く。
四月の身体測定で、真弥ちゃんより身長が三ミリ高かった愛波ちゃんがこっちを見ている。
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