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 確か視力の低い総輔が、至近距離のスマホに目を細めた。続けて「緊急連絡先確保できて良かったね」と伝えたら、にこり。 「はい、確かに。ありがとう」  眉を下げ、口角を上げる笑顔は特徴的で印象深い。その穏やかさに包まれていたあの頃を思い出す日もあったけれど、今はもう過去の人。 「弟よ、冬華を傷付けたら許さないからね」 「はいはい、わかりましたよ、お姉さま」  男女の友情はあり得ないと思う派の私だが一部を除いた場合、可能な気がしていた。それは一度破局した男女……私と総輔が良い例である。  別れてからの方が仲良くなれることってあると思う。よく知った互いの人間性と価値観、付き合う前より別れたことで私たちは本当の意味で友達になれたのだ。  再び椅子に腰を下ろした総輔が「そうそう」と内緒話をする要領で口元に手を当てた。  なので私も一応身を寄せる素振りだけ見せ、髪を耳にかける。 「冬華の前では他人のフリを続けよう、今更やっぱり知り合いでした〜ってなんか怪しいし」  目を見合わせる。  確かに言われた通り、散々他人行儀な話し方をしておいて知り合いは無理がある。 「そうだね…わかった」  冬華に嘘をつくみたいで心苦しいけれど、致し方ない。私が感じた気まずさをあの子にまで味あわせたくなくて、総輔との過去に蓋をした。
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