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「ごめーん、お待たせ」  数分後、通話を終えた冬華がリビングの扉を勢いよく開けた。私たちは何事もなかったかのように椅子に座り、淹れ直した紅茶を飲む。 「友達、大丈夫だった?」  急ぎの用事? なんてさりげなく聞いた総輔の隣に腰掛けた冬華は「ん、彼氏と喧嘩だって」と。私の顔を覗き込むようにして、嫌悪感を滲ませた表情で続ける。 「浮気してたんだって、酷いよね」 「えぇ、浮気…それは悲しいね」 「ね〜、最低」  自分のことのように唇を尖らせた冬華。  今度は横で無言を貫く総輔に向かって口を開く。 「そうちゃんは浮気なんてしないでね?」  わざとらしく目を細めて告げたあと、総輔はへらり、薄い唇の端を持ち上げて言う。 「俺は一途だよ。お姉さんには伝わってますよね?」  突然のパスにティーカップがかたん、と音を立てた。ほんの数分前まで親しげに話していたくせに、冬華が来た途端これである。 「(俳優になれるのでは…?)」  これだけの演技が出来るのであれば、するかしないかは別として浮気くらいは簡単に出来そうだ。  私はごくりと唾を飲み、「江間くんに限ってないでしょ」と目の前で不安に揺れる冬華を宥めた。すると「だよね、そうだよね」なんて頬を綻ばせ下を向く。 「そうちゃんモテるからさぁ、ちょっと心配になっただけ。一途なのもちゃんとわかってる」
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