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 その日を境に、総輔からは度々LINEがくるようになった。  付き合っていた当時閉店したお気に入りのパン屋が場所を変え営業再開したこと、あの頃可愛がっていた近所の野良猫が子供を産んだこと、共通の友人が来月入籍すること。  そんな細やかな日常のひとコマを切り取った写真やメッセージに重ねるやり取りは、気付けば2週に1回から週に1回と増えていく。  その最中にも2人の交際は順調に進んでいて、日々惚気を聞かされる私は今日もこれからデートに赴くため準備に勤しむ冬華の隣で彼女の話に耳を傾けていた。 「そうちゃんさぁ、まーったく手出してくれないんだけど…」  ぱたん。アイシャドウパレットの蓋を閉めた冬華が、切り出した溜め息混じりの声。 「…ん?」  一瞬言われた意味がわからなくて首を傾げた。  その後で「もう付き合って半年だよ?」と付け足されたので、所謂身体の関係のことかと理解した私は妙な気まずさを胸に宿す。 「えー、っと…そうなんだ…?」  こういう時、反応の仕方がイマイチ良くわからない。友達のカップルならまだしも相手はあの総輔だし… 「うん…まだキスもしてくれない」  そう告げた唇を飾るリップは淡いピンク。先日2人で出掛けた時に悩みに悩んで決めた色を纏った冬華はやっぱり可愛い。
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