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 どうりで慣れ親しんだ総輔のはず。冬華がいないのであれば変にかしこまった話し方をする必要もない。  ならば手っ取り早く話を済ましてしまおうと「どうする?」と問えば、返事はすぐに来た。 『ひとまず冬華を家まで送り届けたら、駅前でタクシー拾えるまで粘るよ』 「…大丈夫なの? 風邪引くよ?」 『ん、大丈夫。明日休みだしね、なんとかなるって』  俺のことは心配しないでと、付け足された台詞に真っ先に浮かんだのは冬華の顔。総輔の心配というよりかは、冬華がそれを許さなさそうで「うーん」と唸った。 「…いいよ。泊まっていきなよ」  そうしないと後が怖そうだ。総輔が翌日体調を崩しましたなんてことになれば、私が責められそうな熱量が冬華にはある。 『え? いや、悪いし……』 「仕方ないじゃん。その代わり、うちでいかがわしいことしないでよね」  そういうのは総輔の家かホテルでして、と少し強めの口調で言えば、『ああ、はいはい』なんて半分ふざけたような声。 『あの子には指一本触れません、約束しますよお姉さま』  また、馬鹿にして。言い返そうとした矢先、電話口の向こうで『あたたかいの売り切れてたー』と冬華の残念そうな声がした。  2人の会話が聞こえる。  総輔が『お姉さん、良いって』と言えば『本当?』なんて喜びを隠そうともしない冬華がそのままのテンションで電話をかわった。 『いいの? お姉ちゃん、ありがとう!』 「うん、気をつけて帰ってくるんだよ」  我ながら、本当妹に甘いと思う。それでも残された2人きりの家族だから、できることがあるなら協力してあげたいし叶えてあげたい。  そこには当たり前に、総輔への気持ちは1ミリもなかった。
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