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「じゃあ、お先にお風呂いってきます」  申し訳なさそうに、名残惜しそうに脱衣所へと消えていく冬華を見送ったら、タオルで頭を拭いている総輔にホットミルクを差し出した。 「お疲れさま。寒かったら設定温度上げるよ」 「大丈夫、ありがとう。気遣わないで」 「使うよ、冬華の大切な人だもん」 「はは…そっか」  ぽたり、透明感のある黒髪から滴る水滴が肩に落ちれば、それが小さな染みを作る。  明日の朝までに濡れた洋服を乾燥機で乾かしておけばいいか、などと思考を巡らせていたら総輔がこちらを見ていることに気付くのが遅れた。 「六花は冬華のことが大好きなんだね。他の人は眼中にないって感じ」  告げた総輔の瞳は、どんより重い黒。それに一瞬圧倒された私が息を飲めば次の瞬間には、へらり。軽く捻じ曲げた口角がいとも簡単にえくぼを見せた。 「今って付き合ってる人とかいる?」 「え、あ…いないよ」 「そうなの? 六花、モテそうなのにね」 「モテないでしょ、可愛げないし」  冬華みたいな女の子らしさもないし。そう付け足したあとで笑ってみせても、普段へらへらしてるくせにまるで別人のように真顔を貫く総輔が真っ直ぐ見つめて言った。 「六花は可愛いよ。俺は好き」
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