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「……」  思わず変な間を作ってしまった。  "好き"とか他意はないにしろ突然すぎて反応に困るし、驚きのあまり目を逸らした私を泳がせるようにホットミルクを味わって飲んだ総輔が「ん?」と続く言葉を待った。  なんだろう、違和感。この人こんな感じだったっけ?  私の知ってる彼は、誰にでもそういうことを言うような人ではなかったはず…少なくともあの頃は、だけど。 「な、なんか総輔、軽いね…あんまり彼女以外にそういうの、言わない方がいいんじゃない? 冬華の気持ち考えなよ」  身近な女の子をその気にさせるような発言は良くないと思う。私はまだしも少しでも総輔に気がある子なら可哀想だ。 「ほら、やっぱり眼中にないじゃん」  雪で濡れた長い睫毛を伏せた。  呟いた総輔が未だ湯気の立つホットミルクを一気に飲み干すと、空になったマグカップを私の前に差し出して告げる。 「俺が本当に軽かったら、今頃ここにはいないんだよね」  笑顔なのに、どこか辛そうに歪めた口元が皮肉めいた台詞を吐いた。  言葉の意味が分からなかった私がマグカップを受け取るも、引き渡す気のない力加減で手を離そうとしない総輔がいる。
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