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「、? 何…どういうこと」
一体何が言いたいの。自ら口を開く割には、随分と遠回しな言葉を選んでいるような気がした。
自身の気持ちを伝える気があるのかないのか、それすら伝わってこない表情に困惑で塞ぎかけた私の胸中はどくん、嫌な高鳴りを響かせる。
「六花さぁ…最近LINEの返事遅いよね」
かと思えば突然、けろっと上げた口角に薄めた瞳。弾む声色に似合わない黒い眼差しは、互いが握りしめたマグカップ越しにもその温度を伝えてくるよう。
「え…そう、かな…」
「うん、だから俺、彼氏でも出来たのかなって気になっちゃって」
そう告げた総輔はあの頃みたいな平穏さを纏っているにも関わらず、何故か心の底では何かを煮立たせていそうな落ち着きのなさを感じる。
何の話なの……真っ直ぐぶつけてくればいいものを、いつまでも周回しているだけで核に触れない気味の悪さがそっと恐怖を呼び寄せる。
「それって、総輔が気にすることじゃないと思う……」
私に彼氏がいようが、LINEの返事が遅くなろうが、冬華と付き合っている総輔には何の関係もない。
別れたあの日、私たちは終わった。それがたまたま今になって関係性を変えただけで、私たちが終わった事実は変わらない、のに。
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