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それから5分程経った頃、玄関の扉が開く音がした。その後に続くのは少し雰囲気の違う「ただいま」と笑い声。
「おかえりー」
私も心なしか声を弾ませ、出迎えるため玄関に赴く。ぱたぱたと廊下を急ぐスリッパの音に、扉が閉まる音。
「雪降ってきた〜寒かったね」
冬華が言えば、軽い相槌を打つ人影。
私は2人に駆け寄ると、冬華の隣に立つ人物に視線を寄せた。
高い背丈。女子の平均身長を下回る冬華と並べばさらに大きく見える背格好に、さらさらの黒髪。
色白の肌に映える黒いマスクをわざわざ顎まで下げたら、私を見て「おじゃまします」と微笑んだ。
「お姉ちゃん、紹介するね。お付き合いしてる江間 総輔くんです」
冬華は頬を赤く染めながらちらりと彼を見る。彼もまた、私を見てぺこり、頭を下げる。
私は、その男を知っていた。
「(……総輔、?)」
それはかつて、私が付き合っていた人だったから。
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