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 総輔と並んだ冬華はとても幸せそうだ。  それこそ私では引き出せない笑顔ではしゃぐ姿は姉として喜ばしいくらい。 「(…得体の知れない相手より良いのかも)」  私の抱える気まずさはさておき、総輔は妹を弄ぶような人ではないはずと心の隅で安堵した。  例えGPSをスマホに仕込まれていようが、冬華はそれすら受け入れてしまいそうだ。なんなら最近のカップルはお互いに位置共有しているとかなんとか、ニュースで見た。  ならば彼の中ですでに消えた私は他人として、妹の恋人としての"江間くん"と接していけばいい。  それから数十分、他愛もない話をした。  冬華の幼い頃の話や友達のこと、いつも家で惚気ていること。  そのひとつひとつに楽しそうに頷いては、照れている冬華を優しい眼差しで見守る総輔に懐かしさが込み上げてくる。  こんな空気感だったなぁ、なんて過ぎていく柔らかい時間を感じながら2人のやり取りを眺めていると、ふいに冬華のスマホが鳴った。 「あ、友達から電話だ! ごめん、ちょっと席を外すね」  うん、と私が答える頃には通話を開始していた冬華が立ち上がりリビングから消える。その間約数十秒、弾んでいた会話が一旦途切れ残された私と総輔の間には沈黙が訪れた。 「(……これは気まずい、かも)」  リビングと廊下を挟んだ扉の向こうで、通話相手と盛り上がる声がする。他には時計の音と熱帯魚のいる水槽のモーター音。  ちらりと総輔のカップを見れば、冷えた紅茶の水面が微かに揺れている。
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