だれもすきになることのできない欠陥人間

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 目を見てはっきりと答えたら、なぜか彼はまぶしげに目をすがめた。  急速に体温が上昇し、じわりと変な汗がにじむのを感じる。 「私……帰ります」  言いながら立ち上がった瞬間、足元がぐらりと揺れた。 「わっ」 「あぶない!」  倒れかけたところを、すばやく伸びてきた手に受け止められる。たくましい胸に飛び込むような形になり、一瞬で全身がかあっと熱くなった。  慌てて離れようとしたところをひざの裏に腕を回され、すくうように抱え上げられた。 「きゃあっ」  浮遊感と突然高くなった視界に思わず声が飛び出した。周囲からどよめきが起こり、四方八方から視線が矢のように飛んでくる。 「下ろしてください……!」 「そんな足取りでは、十歩も行かないうちに転んでしまうよ」  ゆったりとした口調なのに、なぜか有無を言わせぬ雰囲気がある。彼は私を下ろすことなく、長い足で店を出ようとする。 「あの、待ってっ、お支払いがまだ――」 「大丈夫、終わっているから」 「えっ!」
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