だれもすきになることのできない欠陥人間

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 これまで、どうして長澤さんが私に構ってくるのかずっと謎だった。  私はさして美人でもスタイル抜群というわけでもない。  身長は一六三センチの中肉中背で、顔の造りも全体的に平凡。丸い輪郭に、さほど大きくはない奥二重まぶたの目、丸い鼻と唇がちょこんと収まっている。  唯一自慢できる点といえば、腰の上まで伸びた髪だが、二十六年間一度として染めたことがなく真っ黒のままで、今どきの女性らしい華やかさはない。  せめて外見をカバーできるくらいかわいげがあればよかったけれど、性格すら真面目だけが取り柄の面白みがない人間だ。周囲を楽しませるどころか、『なにを考えているのかわからない』と言われることすらある。  こんな、どこをどう切り取っても地味な存在のため、大抵の人は一度断るともう声をかけてこない。  それなのに長澤さんはそうしなかった。恋愛抜きでいいと言ってくれたので、本当に友人関係を築きたいのだと思ってしまった。 「私、帰ります」  顔を背け、足もとの手荷物かごからバッグを取り出したところで、「待てよ」と低い声がする。 「散々貢がせておいてそれかよ」 「貢がせてなんて――」  驚いて顔を上げると、むっつりと不満そうにしている顔と目が合った。
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