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「なんてことしてくれるんだ! スーツの裾にかかったじゃないか!」
「ご、ごめんなさい!」
大きな音を聞きつけたスタッフがすばやくやってきて、慣れた手つきで片づける。スタッフが立ち去った後、私はもう一度長澤さんに頭を下げた。
「本当にごめんなさい。きちんとクリーニング代をお支払いします」
「いや、金はいい。代わりに今から部屋で染み抜きしてくれ」
「え……」
「行くぞ。早くしないと染みになる」
立ち上がった彼に腕をつかまれ、ぐいと引き上げられる。このままでは部屋に連れ込まれてしまいそうで、必死に足を踏ん張った。
放して、と口にしようとしたとき。
「貴司君!」
甲高い声が飛び込んできた。
私の腕をつかんでいた長澤さんの手がぱっと離れる。声がした方を向くと、見知った顔が足早にこちらへ向かってくる。
一直線にやって来た彼女は、一瞬私をぎろりと睨みつけた後、長澤さんの方を上目遣いで見つめた。
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