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「いや……違うんだよ、あいり。これは……滝川にしつこく誘われて、仕方なく食事に付き合ってやっていただけなんだ」
……え?
彼のセリフにまたしても耳を疑った。まったく身に覚えのない。訂正しようと口を開く前に、頬を膨らませた久保田さんが、じっとりとした目で私達を見比べた。
「ほんとにぃ?」
「いえ、あの――」
「当たり前だろ。俺にはあいりがいるのに、こんな無表情で面白みのない女を相手にするわけないじゃないか。相談があると言うから来たのに、いつまでたってもつまらない話ばかりで、あきれて帰ろうとしたら飲み物をぶちまけられて、こっちの方が迷惑していたんだ」
遮るように声を被せてきた長澤さんは、早口でまくし立てた後、いまいましげな顔で私を睨んだ。
「なにを話しても眉ひとつ動かさないんだからな。本当につまらない女だよ。誰もすきになったことがないとか言っていたけど、心が貧しい証拠じゃないのか」
長澤さんは「ふん」と小ばかにするように一笑した後、久保田さんを引き連れて去って行った。
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