あらすじ

1/1
前へ
/64ページ
次へ

あらすじ

*ネタバレになります。 読みなれないシナリオ形式の文章を読む助けにはなると思いますが、先の筋書きをお知りになりたくない方は、このページを飛ばして行かれることをお勧めいたします。 主人公の山田茜美(あかねみ)(29)は、超科学雑誌「ぱらの丸」の編集部員をしている。 夏のある日、茜美は心霊スポットである古い民家の庭を大竹(65)に案内してもらうも、その真偽は怪しく、おまけに大量の蚊の襲来に会い、その場から逃げるのを余儀なくされた。 同日夜、自らが吸血鬼だと名乗る東小金井に住む番博之(31)の部屋を、茜美はインタビューに訪れる。茜美が買ってきた牛丼弁当を二人で食べながら、牛丼談議に話は弾むものの、番は一向に吸血鬼の本性を現わさない。業を煮やして茜美が少し大きな声を出したその時、落雷があり、停電になる。 暗闇の中で交わされる二人の会話。時々聞こえる「ちっ」というネズミが鳴くような音。蚊がいるようで、茜美は腕を刺される。 部屋に灯が点いて、番は、自らの吸血鬼の能力を茜美の前で見せる。あひる口にした番の上唇から伸びる長い針。針はまっすぐ茜美の首筋に向かい、彼女の血を吸うと、口の中に納まった。番の吸血鬼の能力とは、血を吸う蚊の能力なのだった。 青森の言葉で「ヨガの衆」と呼ばれる吸血鬼について番は茜美に説明する。相手を針で刺して痒がられるだけ、という存在価値が希薄な能力は、しかし、一度刺されると一週間は蚊が寄ってこないという利点もあった。 翌日、茜美はその実証も兼ね、肌を出した服で再び心霊スポットである前日の古い民家を訪れる。そこで会った大竹から明かされるインチキの数々だが、偶然二人は井戸の幽霊を発見する。 茜美は取材を終え、番に電話で蚊に刺されなかったことを報告し、そのまま牛丼弁当を持って彼の部屋を訪ねることにする。 やがて二人は結婚する。 生まれたばかりの赤ん坊がいるマンションの部屋で、茜美は蚊に刺された足を掻いている。番の吸血鬼の能力は、いつのまにか失われてしまっていた。      そのことをすこし残念に思う茜美だったが、それ以上の幸せを手に入れたことを彼女は実感する。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加