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〇同・同・同・庭・縁側・外
朽ちかけた縁側に向かって立っている茜美と大竹。
茜美「ここの住人は?」
大竹「もう誰も住まなくなって大分経つみたいだね」
茜美「黙って入っちゃっていいんでしょうか」
大竹「平気平気。あのね。この辺りは昔、刑場だったらしいんだよ。何百人って人がここで殺されたとか。それで以前から、武士の霊を見たとか、人魂を見たとか、うめき声が聞こえるとかね。だから今は誰も近寄らない」
茜美「そうなんですか」
と言いながら、建物の写真を撮ろうとする茜美。
「ぷーん」「ぷーん」と複数の蚊の寄る音。
茜美、カメラを下ろし、首筋や腕を滅茶苦茶に叩く。
大竹「大丈夫?(と茜美を見て)それでほら、あれ、見て」
と家のガラス戸の中を指さす。大竹と茜美の視線の先の棚の上に並ぶ、金髪少女の着せ替え人形、ウサギの人形、象の人形。
茜美、手で蚊を追い払いながら。
茜美「何ですか?」
大竹「髪の伸びる人形」
茜美「ええ?」
大竹「毎年少しずつ髪が伸びてる」
茜美「昔の写真とかありますか?」
大竹「それは、ちょっと」
茜美「ちょっと信じがたいですね。証拠がないと。あのウサギと象は?」
大竹「耳の伸びるウサギ、鼻の伸びる象」
茜美「昔の写真とかありますか?」
大竹「それは、ちょっと」
茜美「ですかあ」
大竹「ダメですかあ。でも、あれなら」
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