〇同・同・同・同・井戸の前・外

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〇同・同・同・同・井戸の前・外

桜の木と井戸が並んでいる。 全身に寄る蚊を払っている茜美、桜の木に打ち付けられた藁人形を見ている。 大竹、テレビショッピングの司会者のように、藁人形を手の平で示し。 大竹「こちらが話題の一品となります。いつ来ても、ここに真新しい藁人形が打ち付けられてる」 藁人形に近づく茜美。 茜美「新しい。藁の匂いも芳しい。これは、別の意味で怖いですね。今を生きている人間の恨みの深さ」 大竹「でしょう。深いんです」 茜美「え?」 大竹「いやいや、なんでもないです。でね、極めつけがこの井戸です」 大竹、井戸のヘリを叩く。 茜美「ここは?」 大竹「井戸の底から女の人の声がします」 茜美「そういうのです。そういうのが欲しかった」 大竹「若い女の声で『まんじゅうこわい』」 茜美「落語、ですか?」 大竹「はい」 茜美、井戸の上に頭を出して、耳を傾ける。 茜美「聞こえませんけど」 大竹「聞こえる時もあるんです」 茜美「待てば聞こえますかね」 大竹「待っても聞こえないときは聞こえない」 茜美、井戸の中に頭を突っ込む。 途端に聞こえる無数の蚊の鳴く音。 「ぶうううううん」 茜美「ぎゃああああ」 井戸の暗闇に茜美の声が響く。
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