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〇同・同・ぱらの丸編集部・中
ドアを開けて顔を出す茜美。
茜美「今帰りました」
デスクが三つだけの編集部。
奥のデスクは本の要塞。UFOやUMA、超能力など、超科学系の本が重なっている。そこから渡瀬正平(55)、顔を出すと、突然叫ぶ。
渡瀬「ストーップ。ちょっとストップ。入んないで、茜美ちゃん」
渡瀬、手をストップの形で突き出したまま歩いて行き、冷蔵庫の上の調味料入れから塩の瓶を取ると、茜美の肩に振りかける。
茜美「すいません」
渡瀬「これで大丈夫。ちょっと感じたからね」
茜美「マジですか?」
渡瀬「少しね。お帰り」
茜美「ただいま戻りました」
茜美、自分のデスクに座り荷物を置く。
茜美の正面のデスクに座っているのは、小太りの松尾春弥(40)。
キーボードを叩いている。デスクには、パソコンとコンビニ袋に入ったスナック菓子だけが置かれている。
松尾、袋菓子をつまみ、パソコンから目を上げずに。
松尾「どうだったの?心霊スポット」
茜美「いやあ」
松尾「(顔を上げ)どした?」
茜美「すいません。明日、土曜なんで、私、もう一回行ってみます」
渡瀬、後ろからコップの麦茶を茜美のデスクに置きながら。
渡瀬「やっぱ。なんかにやられた?」
茜美「違うんです。すいません」
松尾「無理しないでいいよ。差し替えは利くから。宇宙人が好きな食べ物ランキング、どっかに載せないと」
茜美、コップの麦茶を飲む。
渡瀬「これから吸血鬼の取材でしょ。直帰だよね」
茜美「はい。すいません。6時に東小金井なんで」
渡瀬「吸血鬼なんてどこからそんな情報」
茜美「こないだの同窓会です。大学のオカルト研。友人の友人が吸血鬼だそうです」
松尾「大丈夫?それ。吸血鬼って、美女の血を吸う」
茜美「私、美女だから心配かもしれませんけど、それは、大丈夫らしいです。いきなり噛んだりしない。友人も何度か会ってる。今回はインタビューするだけです」
渡瀬「(笑いながら)あ、そうだ」
と言って、自分のデスクの引出しから金のネックレスを出して、茜美に渡す。
渡瀬「これ。お守り。首にかけておくといい」
松尾「僕も、さっきコンビニで買ってきたよ、お守り。どれがいいかわからないから何個か」
と言いながら、デスクの上のコンビニ袋を探る。
茜美「編集長、松尾さん。ありがとうございます。私、愛されてる」
渡瀬「ははは。もう今日は一旦上がっていいよ。家帰ってシャワー浴びてから行くといい。問題あったら連絡ちょうだい」
松尾「取材先の場所、メモに書いといて」
茜美「はい」
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