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生きていく
「秋山コーポレーションの社長がAI?」
「一体何がどうなって、、」
「金はどうなるんだ?」
「本当にあいつが?」
「テレビで見た、あいつとは全く違くね?」
「てかあのおっさん、あんな強いのかよ。」
周りがざわざわしているが、突然の再開に戸惑い驚いてる一人がいる。秋山涼風。秋山輝昭の一人娘にして、現秋山コーポレーションの代表。
強く勇ましい彼女はいなかった。
「すず、大きくなったな。」
「なんで、、よ。なんで、、わたし、これまでずっと一人で、、、お母さんもお父さんも、、殺されっちゃったって、、、がんばって、、一人で、会社、、守ってきて、、、片山も、、それにずっとずっと、、」
「すず。もう大丈夫。今まで一人してごめん。ありがとう。これからはずっと一緒だ。」
「う、、ん。」
まるで少女だった。冷たい、血が渇く冷たい地面にしゃがんで泣く彼女はまさしく少女だった。
そこにいたのは、かつての愛に溢れた生活を思い出す、普通の少女だった。
「皆、娘に協力してくれてありがとう。説明が必要だと思うが、なんせ時間がない。倒したのは、身内の錆だ、本当の敵じゃない。こんな姿だが、ついてきてくれる者には、誠意を尽くす。」
「ふざけんな。もう何がなんだかわかんねーよ。お前も敵だろ。人間じゃねーんだよ。お前は。」
「そうだそうだ。」
「ふざけるな!」
「金渡せよ!」
「やめてよ!お父さんだから!私のお父さんなの!」
「お前らアホだろ。秋山輝昭は有名だ。この世界を作った戦犯。それが生きていたんだ。利用しない手はねーだろ。お前なら、敵がはっきりしてるんじゃないか?」
柊が鋭い優しさを見せる。
「さすがだよ。柊。君は頼りになるな。」
「ならねーよ」
「聞いてくれ。俺たち人間は、名前を奪われた。今まだ、人間の数の方が多い。殺さない理由があるんだ。」
「何だよ。」
「早く言えよ!」
「黙って聞けよ。」
加藤が場を治める。
「AIには、人にできないことができる。けど、最後の最後で人の心が必要なんだ。」
「それって」
「そうだ。」
「アイのカケラ」
「アイのカケラがなければ、自考する完璧なAIを作ることができない。そのアイのカケラは、人の命と引き換えなんだ。人がいなきゃ増えないんだ。戦うしかないんだよ。お前たちの命はAIの大量生産までの命。ただの屍なんだよ。」
最低限の説明だった。補助金を受けて、政府の言いなりになって得た研究。そこから推察できる政府の目的。人の滅亡。AIの支配。生き残るのは、AIに都合が良い人間と都合が悪くてもいかさなきゃならない人間だけ。
俺たちは、都合が悪くて殺すべき人間だ。
「このまま、金をもらって帰るのも構わない。娘に会わせてくれたそれだけで感謝だ。」
「俺は帰るぞ。金をよこせ。」
「ああ。すず。」
「はい。」
口座を確認して金を振り込む。
「俺もだ。」
「私もだ。やってられるか。」
「金があれば生きていけるんだ。」
流れ出した人の流れは簡単に止めることはできない。34人いた生き残りは、私と涼風を除いて
8人だった。
「お前らはどうするんだ?」
「俺たちは、もうAIだ。それに、いくら命の恩人でも親の仇かもしれないやつには従えねぇ。」
「そうか。」
茅場兄弟の協力を得られることはなかった。
残ったのは、柊、岩城、西野、阿部、宇野、城所、道上、そして加藤だった。
「加藤、、。」
「おれはさ、会社やってたんだよ。この腕みたいにもうねーけどさ。そんなに大きくもなかったが金型の加工をやってた。お門違いだって思うぜ?俺もよ。だがよ、恨むなっても無理があるだろ。お前が、、お前がぁぁぁぁぁ」
その場でうずくまる加藤を見下ろす。
肩を叩くことはできない。権利はない。不景気ではあった。うちのと契約が生命線だったことも知っている。彼を、この経営者を、この男を、この人間を、追い込んで這いつくばらせたのは、この私なのだから。
私と涼風を含んだ9人で、世界をひっくり返す。
起こすのだ。革命を。
第1章 完
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