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手にしたアイのカケラ
名前を取り戻した受験者たちは、次第に連携とマイクロンの扱いに順応したように戦いをこなすようになった。
私といえば、力こそ凡の凡だったが、スピードには分があるらしく、パワー型の加藤と息を合わせて数十体の始末を完了していた。
「それにしてもこのアイのカケラだっけか?気持ち悪いな。何でこんなブニブニしてんだよ。」
海鼠みたいな形をした異物に気持ち悪さを覚える。ナマコは食べれるんだっけか?
手にしたいくつかのアイのカケラを手にボヤく加藤に告げる。
「これが核らしいな。これを取ればあいつらは制御を失い、力尽きる。」
逆にいえば、それができなければ怪我などもちろんしないので永遠と攻撃をつづけてくる。
「てか流石にあの秋山って女も限界じゃねーか?」
すぐに押しつぶされることはなさそうだが、明らかに勢いがなくなっている。戦いを中断して、何かを頬張ってるように見える。一人で引きつけるにも限界がある。体力だって無限ではない。
橋田や板倉、野崎や坂柳など先ほど名前を聞いたやつらも苦戦を強いられている。
余裕がありそうなのは、柊や岩城とあいつらか。
「何じゃあいつら。」
「あいつ、息すらあがってねーぞ。センスが飛び抜けてやがる。」
戦い方が正確で身体動作が見えない上に動きが極端に少ない。
「名前が聞けなかった連中だな。」
「機械みたいなやつだな。」
ほかにも、独特な身体操作で戦い方が読めないやつがいた。早い上に一撃が重く見える。敵にしたくない奴らだった。
彼女のサポートに行きたいが、全てを薙ぎ倒して駆けつけるには、力が足りない。
「柊!秋山を助けてやってくれないか!?」
近くも遠くもない位置にいた柊に向けて声をかける。
「報酬は?」
「アイのカケラを少し分ける。」
「三つだ。寄越ないなら殺す。」
「わかった。たのむ。」
「行くぞしず」
「はぁい!しゅーちゃん!!」
「おい、おっさん何で助けんだよ。俺のカケラはやらんからなぁ?」
自分もおっさんであろうにそんなことを言ってくる。
「ああ、わかってる。しかし、あいつがやられたら私らも総崩れになる。」
しかし、数が多すぎる。何か手を打たなければ、ジリ貧だ。
手は、、、、、、、、、、、、、、、、ある。
「加藤!生き残ってる奴らを集めるぞ。数が多すぎる。策を打つ。」
「策ぅ?そんなんあんのかよ。」
「ある。信じろ。」
「あぁ。わかった。そこに集めるぜ?」
「ああそれでいい。」
俺は、作戦に必要な人材を探す。
いた。攻撃を喰らい、歩くことなどままならいいのだろう。
「おい。声が聞こえるか?」
「あぁ。だが目があんまりみえねぇ。」
「大丈夫だ。これを食え。」
そう言って差し出したものを見たら、驚いて拒否されるだろう。
しかし、目が見えないのなら好都合。
「なんだ、、きもち、、わるい。ぜりー?こんにゃく?」
「アイのカケラだ」
「おぇぇぇぇ。おまえ、何食わしてくれてんだよ。ふざけんなよ。」
「目が治ったであろう。」
「え、?うわ本当だ。なんでこれ。いやでも、こんなもん食ったら。」
「いやジジイの策は正しい。この女もこの戦い中で何個も食ってやがる。」
ジジイ、、よび。 まあ良いんだけどね。名前言ってないし。
「ああ。いずれ説明しようと思っていたが、数が多すぎる。最早その時だ。」
柊のサポートを受けた秋山が説明を始めようとしている。
加藤が集めた生き残りたちによって私たちを囲みサークル上の陣形が完成した。
「本当に食うのか?これを?」
「そうだ。一つ100万と言ったアイのカケラは食べることができる。マイクロンは感情を乗せて戦う武器。アイのカケラは感情の塊。これが無ければあいつらはガラクタのまま動かない。人間が食べれば、身体強化、身体異常の回復ができる。戦いが終わるまで待っておいて100万と交換するのも構わん。得られる効果を期待して食べるのも構わん。各自で判断しろ。金はしっかり払う。」
「これをたべる?」
「100万だぜ?」
「いやでも目が治るんならほかにも」
斜め上の発想に戸惑うヒーローもどき。
私も例外ではないが、一つを道端のやつ食べさせ
三つのかけらを柊に渡す為、残るカケラはひとつ。
「そんな悠長なこといってらんねーぜ?」
加藤がそんなことをいってくる。そりゃそうだ。
「包囲されたが関係ない。いざって時もアイのカケラがある。戦うぞ。」
「ああ、もうこのままじゃ戦えない。食うしかない。」
数人の怪我人がアイのカケラを口にした。
みるみる内に体が回復し、力が漲る様子。
「ひゃっっほーい!!!」
「いくぜいくぜいくぜ!」
アイのカケラを口にして気分が上がったのか狂い出すものたち。傷が浅いものは、過剰摂取となり、ハイテンションとなるのだろう。
私は、傷はほぼない。もちろん直すべき怪我もない。まだ戦える。
私は、アイのカケラを食べた。
ここからが地獄であると知っているから。
「この味もひさしぶりだな。」
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