ルールの無いAI

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ルールの無いAI

「涼風様は無事なのか!」 「えぇ、無事だと聞いております。」 「我々もマイクロンを地上に放ったらすぐ向かうぞ。」 「あぁ。そのつもりだ。」 高度4000m。秋山コーポレーションの 幹部片山陽一郎は、焦りと憤りを感じていた。 生涯、お支えになると誓った秋山輝昭の死から随分と時間が立った。 主君を守れなかった責に苦しんでいる暇はない。 涼風様をお助けせねば。 守れなかった、せめてもの償いとしてこの命が尽きるまで彼女をお助けする。 すぐにでも彼女元に駆けつけなければ。 「ふぐ、、ぐは」 「くたばれ、くそじじいが」 空で起こった、父親代わりだった恩人の訃報が 涼風に届くのは随分と先の事だった。 ---- サークル状に固まった我々は、アイのカケラの影響もあり、巻き返しの算段がついた。 AIの陣形が崩れ始めている場所を見つけると一斉に突破を試みる。 戦力を二つに分断し中と外から攻撃することにした。中のものが敵を引きつけ、道を作る。 意識の外に回ったもの達で外から挟み殲滅する。 中に残る者は、メイン火力として秋山を置く。 外に回った者は、柊と奇妙な連中をメイン戦力として計算した。 加藤と私は、中に残り戦う事にした。 秋山がアイのカケラを頬張ると、何かを取り戻したように破壊を始めた。 その隙に外に回ったら柊達が攻撃を開始する。 戦いに優れた奇妙な連中と柊達の高度な連携により、立て直しに図る。 次第に、マイクロンを使いこなすヒーローもどきにより数百のAIは、数を減らしていた。 「公園の占領にうつる。まず入り口を閉鎖する。私の仲間が居るはずだ。共に、公園の緊急避難場所としての施設に切り替える。施設内完備AIを探してくれ。」 「設備内AI?」 「わからんがやるしかない」 「仲間がいるんだな?」 とても、この作戦の首謀者とは言えない状況の彼女だった。協力者がいるらしい。それはそうか。一人ではどうにもできないからな。 ---- マイクロンによって引き出される能力には、個体差があった。人によって筋力が爆発的に増加し、ものすごい力でねじ伏せることができるかもしれない。物によってはすごい速さで動くことができ、そのまま突っ込んで衝撃を与えることができるかも知れない。 AIには、ルールや常識の幅が広い。全方向の視点をもち、機内から様々な武器を持ち出して戦う。核は内部に存在し、軽い損傷では破壊に至らない。 そんなAIが人の形をしていたら。ただの警備AIとは違い、人の戦い方をしてきたら。そんなものは、AIと名前がついてるだけの戦争兵器に他ならない。 ----- それは、突然だった。作戦が順調に進んでいる段階だった。秋山の仲間だと言う人物を探している集団が遭遇した。 突如として現れたそれは、体の内部から大きな鉄板のようなものを取り出し、エビ煎餅でも作るように押しつぶすようにして五人の人をぺちゃんこにした。 あまりの衝撃音と惨劇に視線が集まる。 一瞬にして地面となった人間が五人。 明らかな敵だった。 逃げられる雰囲気ではなかった。 柊と岩城、奇妙な二人が対峙する。 「柊、アイのカケラは?」 「17個だ。」 「彼女も戦わせるのか?」 「私は戦うよ!しゅーちゃんといっしょに!」 四人に包囲されるAIは動こうとしない。 4人が対角に位置した瞬間に仕掛ける。 それは、手と足を広げ高速に回転して攻撃を防ぐと同時に反撃され四人が吹き飛んだ。 続く戦闘の中でAIから奪った武器と盾、戦闘経験で即死は免れたが、岩城と一人がすでに戦闘不能状態であった。 「しゅー、、、ちゃん、、ごめん」 「息があるならいい。」 「柊、お前もやめておけ。叶う相手じゃない。」 「じゃあどーすんだよ。」 「俺がやる。彼女とそいつにカケラを食わせろ。お前は軽傷だろ。カケラは食うな。」 「わかった。でもどうすんだ。」 「カケラを食う。」 「でもお前、食ったら。」 「わかってる。でもこのままじゃどのみち全滅だ。やるしかない。」 奇妙な一人は、カケラを食べ起き上がった。 そして二人となった奇妙は、二人してカケラを三つ食べた。 後の茅場兄弟である。
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