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秋山輝昭
これから先の未来を支える開発をする。
秋山コーポレーションの命題だった。
会社を作って以来、せこせこ働いて、人を巻き込んで会社を大きくしてきた。
経営の何たるかは知らないが、会社は人によって生きるのだと痛感した。
時代の先端にいたはずがいつの間にか、追い越され優位性を保てなくなった。
そんな我が社でAIの先駆けとなるマイクロンの発明が検討された。
我が社の技術力を見込んだ政府が補助金を吹っかけて説得しにしたのだ。
変化を恐れる者は、少なくない。
大抵の人間は変化を恐れて動く事をしない。
私とて、怖いものは、怖かった。
しかし、大事な社員の家族、もちろん私の家族達も。5年後、10年後、これから先も生きていかなければならない。
金に変えられないものなどないと思った。
補助金をうけ、開発に成功すれば秋山コーポレーションは返り咲ける。
成功した。圧倒的な資金力を手にした我々は、
時代を築き上げるほどに成功した。
それまで、単純作業を行うことしかなかったAIにマイクロンとアイのカケラをもたらすことによって自考の概念を与えることができた。
その成功が失敗だとも知らずに私たちは歓喜した。喜び、讃えあった。
騙されているとも知らずに。
そんな中、あの日はきた。
自身の遺伝子の一部をプロファイリングしたAIを用いて、身体を捨て、
魂だけの存在として生きながられる実験をしていた。
危険性や秘匿性を考慮し、私と飯山の魂だけをモデルとして実験した。実験は順調だった。
高性能AIによる人間の模倣は、私たちの創造の及ばぬほどであった。
順調なはずだった。
順調だったはずなのに殺された。
政府の犬に成り下がった飯山に殺された。
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「なんで、、おまえが、、?殺したはずなのに」
「一緒に作ったであろうが。忘れたのか?」
「いやそんなはずは、、、。」
「久しいな飯山。私のステラを殺したのは、お前のAIだった。」
「なぜだ。殺したはずだ。だがしかし、今更、戻ってきた所で何もかも失ったお前に何ができる?マイクロンだってそのレベルでしか使えない。勝てるわけがねーんだよ。」
「そうだな。今のままじゃ厳しいかもな。
だがな、私が今載せているのは、精々ここ何十年かの苦悩と吐き気を催す姿になった事に対する恨みくらいだ。」
「なに?出鱈目を抜かすな。」
「ここから私が載せるのは、俺の全てだ。」
「すべて?」
「私が、載せるのは愛する妻を愛する娘の前で殺された父親の怒りだ。」
周囲の建物がギシギシと歪み出す。
室内に風が吹き荒れる。
ずっしりと重い空気を感じずにはいられない。
目に止まらぬ速さで、飯山に襲い掛かり腹に拳を見舞うと飯山が弾け飛ぶ様にして粉々になった。
その瞬間、飯山の護衛のスーツの男が一斉に射撃体制に入ったが、当たるはずもなく、すぐさま攻撃に転じて粉砕された。
父親 秋山輝昭の帰還である。
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