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10年。
長いんだか、短いんだか。
もう分かんないや。
複雑な気持ちでいっぱい。
「……相手に悪いと思ってる?」
モヤついた気分でベッドのシーツを見つめていたら、手を掴まれて薬指を撫でられた。
日焼けして出来てしまった指輪の跡を綺麗さっぱり指で拭い去るように。
本物は鞄の中。
だけど、外したって枷は消えない。
いつも嵌めているペアリングの跡があたしを責めている。
「気付いてたの?」
「そりゃね。目立つし、嫌でも気付く」
「そっか…」
そりゃ渋るはずだ。
こんな跡を付けて自分からホテルに誘ってくる女なんて確実に訳あり。
怪しすぎる。
それでも共犯者になってくれたと思ったら何だか無性に泣けた。
その中身が性欲とかそんな薄汚れたモノだったとしても、あたしに取っては拾い上げて貰ったのも同じ。
それほど切羽詰まっていたし、追い詰められてた。
雨の中で拾われた子猫ときっと同じ気持ち。
果てもない不安と怖さから確かな手で掬い上げられた。
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