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酔っ払いが屯する夜の繁華街。
震えそうな声を抑え、本屋の前でしゃがみ込んでいた茶髪の青年に声を掛ける。
木野楓。25歳。
顔は平凡、体型も平凡、生活も平凡のスペシャル普通人間。
大人しい普段の見た目を脱ぎ捨てて、派手に着飾り、人生初の逆ナンにチャレンジ中。
自分で言うのもなんだけど、結構良い仕上がり。
なかなかエロい。
「……ごめん。なんて言った?」
イヤホンで音楽を聞いていた青年は耳に入れたそれを外すとあたしの顔をマジマジと見た。
聞こえなかったと言うより耳を疑った感じだ。
元々大きい目を丸くさせている。
「ホテル行こ」
「ホテル?」
「うん。そう。その辺のラブホかどっか。2人で」
再び、目的を告げてみる。
すると、青年は信じられないと言いたげにクリッとした目を瞬かせた。
緩くパーマの掛かった茶髪に今風の服装。
可愛い顔立ち。
あたしより随分と若そう。
結構好み。
当たり前だけど、青年は不審がっている。
あたしの顔を訝しげにジロジロと見て、まるで危ない女扱い。
でも、その方がいいや。簡単に誘いに乗ってくる男より安全。
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