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罰が当たったな、と思う。聖也君も罰が当たったし、あたしにも当たった。世の中、上手く出来てる。
「あ、」
そんなことを考えていたら、服の中に手を入れられそうになったから手を掴んで止めた。
必死に言い訳を考えながら。
「……何?」
「うん…。口でしてあげる」
「なんで?」
「生理中だから」
本当は違うけど、嘘を吐いた。断りたいけど、でも断ったらまた浮気されるかもと思うと怖くて堪らない。
まぁ、そういうの時々してるし、聖也君も特に疑わずにちょっと嬉しそう。
次の言い訳はどうしようか悩む。
正直するのが怖い。黒い感情でいっぱいになるから。その所為か途中で感じなくなって体の熱が冷める。
色々準備しないと渇き切って無理。それがバレたら他の女とした時の方が良かったと思われそうで、耐えられずに演技までするようになった。
演技を始めたあたしに聖也君は気付かない。むしろ、喜んでる。偽物なのに。本当のあたしは居なくなったのに偽物のあたしの方がいいって嬉しそう。
そこでもあたし以外としてる。
あたしの体を使って、あたしじゃない、あたしとしてる。
今まで好きと言われていた本物は消えた。偽物に負けて消えてしまった。塗り潰されて綺麗さっぱり。
何かもう泣ける。
いつもと同じく気持ち良くしてあげたら、いつもと変わらず優しく頭を撫でられて苦しくなった。
何も変わらないのに何もかもが変わっている。
悲しい。早く戻りたい。
穏やかに笑っていたあの日の2人に──。
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