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「もう分かったから。早く帰りなさい」
「えー…」
「下校の時刻が過ぎてるでしょ」
どう返せばいいか分からなくって、不満そうな声を出す東郷に真面目な口調で返す。
色んな感情が押し寄せて内心修羅場。
何だか恥ずかしい気分になりながら回収したポスターを丸める。
しっかりしないと……。
相手は生徒なんだから、って妙に焦る気持ちが止まらない。
東郷が普通の態度で接して来るだけに余計。
意識しないように必死。
「帰りたくない」
「どうして?」
「兄貴の友達が家に来るって言ってたから」
「そう…」
「毎度騒がしいし、会いたくないんだよね」
片付けをしていたら溜め息を吐きながら言われた。
憂鬱そうに窓の外なんか眺めちゃって背中が寂しい。
そんなに嫌なのかな。
「苦手なの?」
「苦手と言うか…、疲れる。無駄に絡まれるし」
「そっか…」
「うん。だから先生ん家に泊めて」
「はい?」
「ほら、もうすぐテストだし。勉強しなくちゃイケないから」
無邪気に笑って全く悪気がなさそうに東郷は校舎の中でとんでもないことを言う。
学生の本分を盾に取って堂々と。
思わず周りを見渡して“しー”と人差し指を口に当てた。
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