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私は慌てて侍女のリルに同席を求める。
「待ってくれ。話はふたりきりでしたい」
「では、扉を開いたままでお願いします」
「いや、聞かれたくない話だ。扉は締めてもらう。心配するな。ソルティ嬢君を襲ったりしない」
ここまで言われるとそうするしかない。
「わかりました。ではそうします」
「ああ、すまない」
(ああ、嫌だ。この男とふたりきりになるなんて…もし触られそうになったら大声出しますから)
王子の私室である部屋にはすでにテーブルの上にお茶が用意されていた。
「まあ、かけてくれ」
「はい」
向かい合わせにアルフォンが座る。少しほっとする。
喉が渇いていたので早速用意されたお茶に手を伸ばしソーサーを手にするとお茶を口に運ぶ。
「実は…婚約を解消したい」
ぶっ!思わずお茶を吐き出しそうになった。
それをぐっとこらえお茶を喉の奥にぐびりと流し落とす。そしてやっと声を上げた。
「えっ?」(いいんですか?ほんとに?)
「すまない。君の期待を裏切ることになってしまって…」
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