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コトリと近くにある机の上でエサをフィーラのお皿にのせる。そのエサはフィーラが好きなものなのか、フィーラは息を「はっはっ」と荒くしながら舌を出している。
そのままフィーラにあげるのかと思いきや、なぜか莉音は真逆剤の瓶から、錠剤を一粒取り出した。
そしてすり鉢に入れると、ゴリゴリと薬を擂りはじめた。
「なにしてんのさ」
「まぁまぁ、見ててよ」
薬を擂りおえると、彼女はフィーラのエサの上に、あろうことか粉にした真逆剤をふりかけたのだ。
「ちょっと、なにしてんの。莉音、まさかだけどフィーラにそれ食べさせる気?」
「ご名答。さすがだね。一回誰かで試さないと、効果が本当にあるのかわからないでしょう。でも私はみんなで試したくない。だったら、感情がわかりやすいフィーラで試そうと思って」
最低だ。
「フィーラに何かあったらどうする気?」
「なにも起きないよ。人間で大丈夫なら犬でも大丈夫だよ。効果を見るだけだし、何日も連続してあげないから」
「……」
言い返したいけれど、言い返えせるような言葉が見つからず、私は口をつぐむ。ほかのみんなも、お互いに目配せをしあって黙っている。
私たちの間に張り詰めた空気が流れている間も、当の莉音は気にしていないようにエサに粉を最後までふりかけた。
「これでよし。ほら、おいでフィーラ~」
猫なで声で――相手は犬だが――フィーラを呼び、床に真逆剤入りのエサを置く。
どんな反応をするのか、みんなが緊迫した様子でフィーラの姿を食い入るように見つめている。
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