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暫くそうしていた貴方は、小さくため息をつく。
そしてまた前に向き直ってしゃがみこみ、僕の名前が刻まれた、その石をじっと見つめて。
「また来る」
額をコツリと石に当てると、手桶を提げて立ち上がった。
僕は腕を組みながら、去りゆくその後ろ姿を見送る。だんだん小さくなって、やがて貴方は僕の視界から見えなくなった。
足元に視線を落とすと、小さい花束がひとつと、僕が好きだった店のお菓子がふたつ、並べて置いてあった。
一緒にいた頃は、俺がふたつなんて一度に食べようものなら──身体に悪い、食い過ぎだ、なんて怒っていたな。
──僕達の関係は、誰にも秘密にしていたから。
貴方は今でも遠慮して、一年のうちこの日だけ、僕にずっと会いに来てくれている。
だから、僕もまだ帰らずに待っている。
貴方がくれたお菓子をひとつ、囓る。これも変わらず、僕が好きな味のまま。
もうひとつは……
『食べ過ぎかな』
自分で言ってちょっと笑ってしまう。これはお土産にするか。
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