9人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はもう一度、もう見えなくなった貴方の後ろ姿を見つめる。
……貴方には、前を向いて欲しい。
幸せになって欲しいと思うのは、本当。
だけど、こうして今年も変わらず、貴方が僕を待っていてくれることに、安堵してしまう自分がいるんだ。
……こう言ったら、貴方はどんな顔をするんだろう?
『来年も、再来年も、その先も。
僕は、貴方と一緒にいたい』
未だに消せない、
僕の勝手な〈欲〉でしかないのだけれど。
そして、それこそ僕が貴方に叶えてあげられなかったこと。
『僕もまた来るよ』
そう言い小さく手を振って、僕も貴方に背を向ける。
すると、周りの風景が一斉に灰色に変わった。
……僕も歩き出す。自分の今の居場所へ戻るために。
手には、貴方からの贈り物を持って。
貴方がくれた、お菓子は甘くて。
花の薫りが、愛おしい。
僕は眼を閉じ、貴方を想う。
最初のコメントを投稿しよう!