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「俺もお世話になった先生にこうは言いたくないけど、先生は騙されたんですよ。動画を撮影しているなんて、明らかに計画的な犯行じゃないですか。簡単なハニートラップに引っかかったんですね」 「じゃあ俺は悪くない!」  美並が怒鳴った瞬間、紘太は美並の頭を手で床に押し付けた。 「悪いに決まってるじゃないか。あんたは奥さんを裏切った、ついでに言うとお腹の子どももね。愛する人がいるのに、そんな誘いに乗るなんておかしいに決まってる」 「そ、それは……つい魔がさして……」 「じゃあ魔がさして、俺の大事な人の部屋に入り込んだのか?」 「大事な人……?」  意味がわからないというような表情の美並を、紘太は怒りの形相で睨みつける。 「そうだよ。それに盗聴器を仕掛けて、彼女に恐怖を植え付けた。俺にとっては、それだけでお前は大罪に値すると思ってるよ」 「紘太くん……私は大丈夫だから……」 「いいや、言わせてくれ。自分の保身のために誰かの犠牲を厭わないようなーー俺の大切な人を傷つけてもなんとも思わないような輩は、医者になんかなるな!」  その時、突然麻里亜の家のインターホンが鳴った。足腰がふらつきながらも、なんとかモニターを確認しに行く。 「はい……どちら様でしょうか……」 『警察です。安東から連絡をもらって来たのですが』  服の上からでもわかるほどの屈強な体つきの男性と、その後ろにスーツの男性て制服を着た警察官が立っているのが見えた。  紘太はその声で相手がわかったらしく、表情がパッと明るくなる。 「早川! 遅い!」 『これでも急いだんだ!』  二人のやりとりを聞きながら、彼らがどういう関係性なのかさっぱりわからず、麻里亜はオロオロし始める。 「あっ、あの、開いているのでお入りください……!」  そう伝えた途端、扉が勢いよく開かれ、 「では失礼します」 と言って警察官たちは家の中に入ってくると、紘太に代わって美並を押さえつけた。そして早川と呼ばれた警官は美並の前に立つと、彼の手に手錠をかけた。 「ということで美並雅治(まさはる)、現行犯で逮捕する」  あぁ、やっと恐怖から解放されたんだーーへたへたとその場に座り込んだ麻里亜の体を、紘太が飛んできて抱き止めた。 「大丈夫?」 「うん、平気だよ。あの人、紘太くんの知り合いなの?」 「同期なんだ。頼りになる奴だから安心していいよ」  警察官たちが美並を連れて部屋から出ていくのを見て、麻里亜の心は安心感に包まれた。
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