7

4/5
前へ
/36ページ
次へ
* * * *  身体も心もこんなに満たされた状態で目を覚ましたのは、もしかしたら人生で初めてのことかもしれない。  紘太は背後から麻里亜を抱きしめ、指先は胸の頂をつまんだり撫でたりするので、麻里亜の重たい下半身がまた疼き始める。首筋や背中には彼の唇と舌の感触が気持ちが良くて、ふわふわとした気持ちになった。 「んっ……くすぐったい……」 「気持ち良いじゃなくて?」 「もちろん気持ちいいけど……でもそれより恥ずかしいかも……!」 「恥ずかしい? 昨日はあんなにイチャイチャしたのに?」 「だって初めてなんだもん……私、変じゃなかった?」 「変どころか、可愛い過ぎて身がもたない」 「またそんなこと言って……。あっ、もうこんな時間! そろそろ起きないと。今日は部屋を探しにいく予定だし」  すると紘太は麻里亜の体を解放し、自分の方に向かせて引き寄せた。筋肉質な彼の胸の厚みを感じ、守られているような安心感を覚える。 「やっぱり引っ越すの?」 「だって誰かが入った部屋だなんて気持ち悪いじゃない……自分が知らない間に部屋に入って、しかも生活音まで聞かれてて……」 「それなんだけどさ、麻里亜ちゃんは犯人に心当たりはない? 麻里亜ちゃんのことを知りたがっている人物……例えば元彼とか」 「別れてから二年も経ってるし、それに新しい彼女が出来たってSNSで呟いてたから、それはないと思う」 「じゃあ病院関係は? 医師、看護師、患者、関係者」 「そんなふうに言われたことはないかなぁ」 「でも人がどう思っているかなんてわからないよ。俺が麻里亜ちゃんを好きだってことも、気づいてなかったよね?」  麻里亜の鼻をツンツン人差し指で突きながら、紘太はニヤニヤと笑う。 「そ、それは……わかりにくかっただけじゃない? 紘太くん、はぐらかすの上手なんだもん」 「あはは、確かにそれは否めないなぁ。ただそのことでちょっと気になってることはあるんだ」 「気になってること?」 「そう。今回の件が始まったのは、飲み会の翌日からって言ってたよね。ということは、そこで何かがあった可能性がある。何か気になったことはなかった?」  そう言われて、あの日のことを思い返してみる。 「参加したのは六人。看護師四人と医師が二人」 「それは誰? とりあえず名前と性別、それとちょっとした特徴を教えて」 「いいけど……居酒屋には他にお客もいたし、そっちの人かもしれないよ」 「とりあえず身近なところから潰していこう」  紘太に突然キスをされ、麻里亜は頬を真っ赤にして頷いた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

506人が本棚に入れています
本棚に追加