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 あれから警察に行き、被害について話すだけでへとへとになってしまった麻里亜は、現場維持ということで部屋にも入れず、部屋探しは諦めて再び紘太の家に戻った。  美並の取り調べをした早川によれば、鍵はロッカーの鍵を道具を使って開けて拝借した後、その鍵を使って部屋に忍び込み、SDカードの在処を探したり盗聴器を仕掛けたそうだ。そして麻里亜が退勤する前に再び鍵を戻したらしい。  そのSDカードだが、持ち歩いている荷物などをくまなく調べてみたが、一向に出てくる気配はなかった。  そのためSDカードについて富田に確認したところ、昔から美並が好きで、たった一度の関係で終わりにさせないために言い放った嘘だということがわかった。ただその嘘によって、麻里亜が多大な被害を被ったことは全く知らなかったらしく、富田は麻里亜に対して何度も謝罪をした後、病院を辞めてしまった。  それからすぐに美並も辞職し、病院は医師の確保などに奔走している真っ只中だった。  麻里亜は不安要素がなくなったことで、ようやく日勤にも戻れるようになった。しかし本音を言えばそれだけでなく、日勤であれば紘太との時間を作りやすいという理由もあった。  彼のことを考えるとつい気持ちが緩んでしまうので、なるべく気を引き締めようとするのだが、ふとした瞬間に彼のことを思い出しては、頬が赤くなるのを感じた。  好きな人と結ばれるって、こんなに嬉しいことだとは思わなかったーー彼を避けて、見ないようにして、関わらなかった日々。それが報われた今は、いつでも紘太を見つめていたいし、キスをしたいし、抱き合いたいと思う自分がいた。  普段通りの日常が戻りつつあったある日、職員食堂で一人で昼食を食べていた麻里亜は、 「あっ、神崎さん!」 と声をかけられた。
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