もう一度キスしたかった

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もう一度キスしたかった

「比奈、ボスが呼んでるぞ」 「はーい」 「お前の歌、俺、好きやねんな。やから聴いてたいけどな、さすがにボスの命令無視できんし」 「分かってる、匠さん、ごめんけどギター片付けといてくれる?」 「おう」 私の人生って最低やった。    その最低だった人生を変えてくれたのが         ボスだった。 渋谷を根城にしている半グレのボス。     坂根聖司、41歳。 西田比奈。24になった。     それでもまだ昔からの夢を      諦めきれずに歌ってる。 「ボス、どうしたの?」 「これから会長に会いに行くから着替えて」 「会長ってインサイドミュージックの?」 「そう。少しは見栄えの良い服でな」 「アタシ、ジーンズしか持ってないけど」 「そこに用意したから着替えて」 「これ?なんかアイドルっぽくない?」 「デビューしたいだろ?なら贅沢言うな」 「はーい」 渋々、用意された服に着替えてボスについていく。2ヶ月前に路上で歌ってた私を偶然見かけた芸能事務所の会長が趣味でやってるレーベルから出さないかって誘われてた。
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